=  ピッチャー  

  野球選手として一度はしてみたいポジションといえば、やはりピッチャーだろう。

  うちのチームではウォームアップのあと、ペアを組ませてピッチャーとキャッチャーの練習をさせている。15球投げたらピッチャーとキャッチャーを交代する。その中でストライクをたくさん投げている子がピッチャーになれる。

  上手く投げられなくても一生懸命やっている。みんなピッチャーになりたいようだ。

  Eric がまたアピールしてきた。

  「ぼくは、もう11個もストライクを投げたよ。」

  相手のキャッチャーはチームで一番おとなしい Navid (ナビッド)。
普段のキャッチボールを見ていて、11個もストライクを投げられるはずがない。ある子がEric とキャッチボールをするのは嫌だと言ってた。ボールをキャッチできないし、とんでもないところに投げるから。

  Navid がボールだといっても、いや今のはストライクだ、絶対にストライクだよ、なんて言ってるんだろう。コーチの目はごまかせないよ、Eric。

  まあ、そうとはわかっていても、

  「おー、すごいね。その調子で投げろよ。」

  と盛り上げてやらなければ、ね。

  子供はできるだけ誉めてやるのがいい。
  でも、誉めすぎもどうかと思う。

  カナダ人の親は少々誉めすぎだ。

  こんなこと誰にだってできるのに、と思うことにも。。。
  普通のピッチングをしていても、
  「Excelent pitching !」 (すばらしいピッチングだ!)

  簡単なゴロをさばいただけでも、
  「What a play !」 (なんてスゴイプレーなんだ!)

  定位置で捕ったフライボールでも、
  「Nice catch !」 (すばらしいキャッチだ!)

  本当に大げさに誉める。

  ロシア出身のおばさんが言ってた。

  「カナダ人は何でも誉めすぎるからね。小さいころからたいしたことでもないのに誉めるから、自分のすることがすばらしい事なんだと思ってしまうんだよ。例えば、娘が部屋をまーるく掃除しても本人はそれでよいと思ってしまう。嫁に行ってそんなことしていたら恥をかくよ。」

  同感だ。


  うちのチームでピッチャーができそうなのは、Gin, David, Grant, Kyle, Kirsten, ぐらいか。。。
中でも Gin はいつもストライクを投げられる唯一のピッチャーだ。

  ふと思うことがある。

  日本人の指先が器用なのは箸を使うからではないか。

  メジャーリーグには日本人のピッチャーが活躍している。野茂、佐々木、長谷川、吉井、大家、伊良部。。。

  彼らは白人や黒人のように95マイル以上のスピードボールは投げられない。勝利をあげているのはコントロールがいいからだ。そのコントロールの元は、指先の器用さにあるのではないかと思うのだ。

  それと、日本人が活躍できるのは野球人口が多いことももちろん影響している。競争が激しいとレベルも上がる。

  高校野球の最高峰の大会に甲子園がある。この大会に5万人の人が応援に来るというと、カナダ人は目を白黒させる。日本では野球が最もポピュラーなスポーツといえる。優れた選手が多いのも当然だ。


  「Indians のみんな、ピッチャーになりたければ、家でも練習しておきなさい。上手くなったら投げさせるからね。」
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