=  子供と野球  

  この地区の野球シーズンは4月中旬から6月中旬までのわずか2ヶ月間のみだ。長いシーズンオフのときに、キャッチボールでもしようという野球好きはいない。たいていの子達は他のスポーツをする。子供たちのスポーツはシーズンによって変わる。

  9月から3月までは、ホッケー、サッカー、バスケットボールをする子が多い。それらのシーズンが終わると、野球、フィールドホッケー、、それに最近流行ってきたラクロス。聞くところによると、ラクロスはカナダ生まれのスポーツらしい。

  他にも、水泳、ラグビー、フットボールなどもある。たいてい2つ、3つのスポーツをしている。

  オフシーズンに練習もせず、たった2ヶ月で野球が上手くなるはずがない。アメリカのように1年中できる環境ではない。

  カナダの子にとっては、野球は退屈なスポーツらしい。動きが少ないというのだ。なるほどアイスホッケーやバスケットボールのようにいつも動いているわけではない。自分が打つ番でなければベンチに座っている。ボールもぜんぜん飛んでこないこともある。確かにそういう意味では退屈かもしれない。

  野球はちょっとタイプの違うスポーツだ。投げる、捕る、打つ、走る、と違うことをする。ポジションもはっきり決まっている。ミスをすると他人にまるわかりだ。バッターはまるでスポットライトを浴びて一人で舞台に立っている役者のようだ。ヒットを打てばヒーローだが、三振するとミジメだ。みんなが見ている。

  野球は団体スポーツでもあり、個人スポーツでもあるといえる。もちろん他の団体スポーツにもそんな要素はあるが、野球はそれが著しい。


チーム  Giants

 
  練習のあと Chris (クリス)が泣きそうになりながら近づいてきた。

  「僕、もう野球やめたい。みんなが下手だと言うんだもの。」

  Chris は身体が人一倍デカイ。確かに野球能力はあまりない。身体が重くてゴロを受ける姿勢が良くない。いつも突っ立っている。まるで弁慶のようだ。それに、今までヒットを打ったこともない。

  「Chris 、野球はとてもむずかしいスポーツなんだ。投げたり、捕ったり、打ったり、走ったりしなければならない。君が投げる球はとても速いじゃないか。スイングだってブーンと音が聞こえるほどスゴイよ。プラスチックの練習用のボールを一つあげるから、家でも練習しておきなさい。」

  少し勇気づけられたのか、それとも私が辞めさせないと思ってあきらめたのか、とぼとぼと歩いて帰っていった。

  たった2ヶ月しかないんだから頑張って最後までやり通して欲しい。つらいから、面白くないからといって何でもすぐに止めたのではこの先どうなることやら。そんな粘りのないことでは大人になってもやっていけないぞ。


  9歳や10歳の子達には野球はむずかしい。大人にとって、ゴルフがむずかしいのと同じではないか。簡単そうでも、そうではない。止まっているボールを打つのでもたいへんなんだ。でも、ある程度思うところに球が飛ぶようになったらゴルフが面白くなる。決して、イントロであきらめてはいけない。


  もう少し我慢しなさい。上手く打ったり、受けたりできるようになれば、野球もたのしくなるんだから!


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